Image: Cylance
Cylanceは人工知能を活用した次世代型のセキュリティ企業。そのセキュリティソフトは、ハッカー攻撃からの防御率99%と非常に高い性能を誇る。同社は2012年7月に創業し、Draper NexusやKhosla Venturesなどから累計$77millionの出資を受けている。2015年11月にはDellとの提携も決まり、サイバーセキュリティ業界から注目を集めている企業だ。今回はCEOのStuart McClure氏とVPのJoel Bauman氏にインタビューした。

Stuart McClure
Cylance
CEO/President, Founder
1991年、コロラド大学ボルダー校卒業。InfoWorld、Ernst & Young、Foundstoneを経て、McAfeeに入社。McAfeeではWorldwide CTOを務めた。2012年にCylanceを設立。
Joel Bauman
Cylance
VP, Business Development
デューク大学卒業後、ノースカロライナ大学にてMRP、テキサス大学オースティン校でMBA取得。BMC Software、Webroot、McAfeeを経て、2012年にCylanceに入社。

予防・予測・効率化がキーワード

―まず御社の事業内容を教えてください。

McClure:当社は人工知能を使った、次世代型のセキュリティソフトを提供しています。近年、企業は高度化するハッカーの攻撃に頭を悩ませています。ハッカーたちは個人情報やクレジットカード情報を盗み、ブラックマーケットで売りさばいています。最近増えているのが、ピンポイントでマルウェア(ウィルスなど悪意のあるソフトウェアやコード)を送りつける標的型攻撃。攻撃パターンが一つひとつ異なるため、通常のセキュリティソフトでは検知が難しく、多くの企業がその被害にあっています。残念ながら小売業界などは大きな被害にあっています。米国で公表されているだけでも、ターゲット、マイケルズ、ホームデポなどの被害があります。こういった攻撃を防ぐためには、従来のセキュリティソフトではダメで、次世代型のセキュリティソフトが必要なのです。

―「次世代型」というのはどういうことでしょうか?

Bauman:セキュリティソフトに人工知能を活用することで、進化するハッカーの攻撃にも対応することができます。われわれのソフトの防御率は99%を誇ります。

 特徴は大きく3つあります。1つ目は攻撃を事前に防げること。これまで人工知能を使ったセキュリティソフトは他にもありましたが、それらはコンピューターなどに侵入され受けた攻撃をもとに、対処するものでした。しかし攻撃を受けた後に対処したのではコストがかかりますし、対処も難しくなります。一方、「Cylance」の場合、コンピューターに侵入する前に人工知能がマルウェアを見破り、事前に攻撃を防ぐことができます。

 2つ目は攻撃を予測できること。たとえ新しく作られたマルウェアだったとしても、過去のマルウェアのパターン分析から、非常に高い精度で攻撃を予測することができます。

 3つ目はコンピューターを効率的に活用できること。毎日、皆さんのパソコンでウィルススキャンをしているのは、コンピューターのリソースの無駄遣いです。そのあいだ、もっと生産的なことにコンピューターを使ったほうがいいでしょう。私たちはその無駄をなくすサービスを提供しているのです。

Image: Cylance

従来のセキュリティソフトは使い物にならない

―Cylanceを立ち上げようと思ったきっかけはなんでしたか?

McClure:私は、もともとセキュリティ企業のMcAfeeでWorldwide CTOを務めており、いかにハッカーが簡単にコンピューターに侵入できるかという実情を知っていました。

 これは嘘のような本当の話なのですが、実は私はMcAfeeのソフトをひとつも使っていませんでした。Worldwide CTOをしていたにもかかわらずにです。なぜならMcAfeeのソフトでは、ハッカーの攻撃を防げないことを知っていたからです。ではどうしたら攻撃を防げるだろうか、と考えて、目をつけたのが人工知能だったのです。人工知能には学習システムがあります。データを集めれば集めるほど賢くなり、何が安全で何が危険かを見分けられるようになるのです。

5億ものデータを収集

―人工知能を利用するにあたって課題は何でしたか?

McClure:いかにデータを集めるかです。人工知能ですから、インプットしたデータ量に比例して精度が上がっていきます。私たちの最初のモデルは、データ量が不十分で60%のマルウェアにしか対応できませんでした。60%ではとても不十分です。そのためマルウェアの専門家をパートナーに招き、オープンコミュニティーでデータを大量に集めました。現在では5億ものファイルデータが人工知能のエンジンに組み込まれており、現在では99.9%までマルウェア対応の精度を上げることができています。

Dellとの提携、そしてアジア展開

―2015年11月、Dellとの業務提携が発表されました。これからさらに御社のサービスが広まっていきそうですね。

McClure:私たちは業界で初めて、パソコンに人工知能を使ったサイバーセキュリティ技術を導入することができました。これを機にサイバーセキュリティ業界で、人工知能の活用はスタンダードになっていくと確信しています。

―すでにグローバル展開を進めています。アジア展開についてはどう考えていますか。

Bauman:私たちは米国で事業をスタートして、現在はイギリス、スイス、シンガポール、オーストラリアなどに顧客がいますが、日本市場へもまさに参入しようと計画しているところです。

 日本で展開するにあたっては、パートナーを組む重要性を感じています。現在は弊社株主であるDraper Nexusも日本市場進出の支援をしてくれています。今後、サイバーセキュリティについて理解しているシステムインテグレーター、ディストリビューターなどと組むことができたらいいですね。

―最後に今後のビジョンを聞かせてください。

McClure:マルウェアやサイバーアタックから、完全に企業を守れるようにすることです。将来はラップトップパソコンやサーバー、モバイルデバイス、IoTなど、全てのプラットフォームに人工知能を取り入れて、サイバー攻撃から守れるようにしたいですね。



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